身代わり令嬢に終わらない口づけを

 いけない、今のローズはベアトリスだ。最近は公爵邸にもレオンにも慣れてきて、少し地が出ているのかもしれない。ローズは、つ、と背を伸ばすと胸を張った。

「いえ、さ、咲いているものを摘もうとしたのは、レオン様が初めてだったということです。バラの花なんて、もう見飽きるほど頂きましたわ、ほほほほ」

 結婚適齢期のベアトリスのもとには、花やアクセサリーやドレスなど、日々山ほど届いていた。ベアトリス自身は、まったく興味がないようだったが。

 ああ、と、レオンは何かを納得するようにうなずいてから、穏やかに笑った。

「では次も、花壇の花を摘むとしよう。お前がそれほどに喜んでくれるのなら、な」