身代わり令嬢に終わらない口づけを

振り返ると、レオンだった。昨日、ハロルドのことを聞いてから、レオンに会うのは初めてだ。緊張気味に、ローズは返事をした。

「はい」

「たいして変りばえのしない花を見て、おもしろいのか」

 呆れたような口調には、ローズのような緊張は見られない。昨日の話は、彼の中で尾を引いていないようだ。ほ、として、ローズは笑った。


「見ていると幸せになれます。花をもらうなんて、初めての経験でしたもの。とても嬉しかったので、大切にしたいのです」

 レオンが、眉をあげた。

「ほう。伯爵令嬢に花など珍しくないと思ったが……そうか」

 言われて、は、とローズは気をひきしめた。