身代わり令嬢に終わらない口づけを

「申し訳ありません、奥様。少し行ってまいります」

「お願いね」

 ソフィーは軽く頭を下げると、部屋を出て行った。その姿を見てローズは、普通のメイドは部屋を退出するときに、いなくならないでくださいね、などと念を押して出て行くことはしないのだと、あらためてベアトリスが普通のお嬢様を違うのだと再認識した。


 閑話休題。


 窓から天気のいい空を見上げながら、ローズはため息を一つ落とした。

(私も身代わりだったけれど、レオン様も身代わりだったのね)