身代わり令嬢に終わらない口づけを

 本当なら兄の妻となるはずだったベアトリスと突然結婚することになったにも関わらず、レオンは一生懸命寄り添おうとしてくれた。優しい人だということは、ローズにもわかる。


 その時、扉を叩く音がした。

「はい」

「あの、ソフィー様、結婚式の打ち合わせの時間なのですが」

 ソフィーが答えると、別のメイドの声がした。

「ああ、もうそんな時間なのね」

 ベアトリスの結婚式までの日は迫ってきていた。ソフィーはメイドの中でもまとめ役らしく、なにかと準備で忙しい。