身代わり令嬢に終わらない口づけを

「甥であることを抜きにしても国王様から一目置かれる存在で、いずれは議会の重鎮とも目されておられる方です。実際、すでに領地の半分はハロルド様が管理なされていて、結婚と共に爵位を継ぐ予定でした」

「まあ」


 現カーライル公爵は、まだ隠居という歳ではない。その公爵が地位を譲るというなら、それは本当に当主として優秀だったのだろう。

「世間ではハロルド様のことばかりが口の端にのぼりますが、レオン様も十分優秀な方です。そういう意味で、カーライル家はとても恵まれておりますわ」

「レオン様のこと、私、最初は、とても怖い方かと思っていたわ」

「真面目で言葉が少ない方なのでそう思われるのでしょう。けれど、とてもお優しい方です」