身代わり令嬢に終わらない口づけを

 リンドグレーン伯爵家は、地位こそ公爵の下にはなるが、カーライル公爵家よりもよほど古い家柄だ。その伯爵家とつながりができるのなら、カーライル家では長男でも次男でもかまわなかったのだろう。家と家をつなぐ目的が強い貴族の結婚には、事故や病気で相手が変わることは、ままあることだ。


「それまでも度々いなくなることはあったのですけれど、たいていは一日二日でどこからともなくお戻りになられていました。けれど今回は本当にお姿を隠されてしまわれて……結婚式も間近に迫っておりましたし、公爵様も仕方なくご決断されたようですわ」

「ハロルド様のまわりに、何か問題でもあったのでしょうか。たとえば、跡継ぎの問題でレオン様と確執があったとか」