身代わり令嬢に終わらない口づけを

「前後の状況から考えると、ハロルド様ご本人の意思で姿を消されたようです。それに、あの……ハロルド様は時々そういう騒ぎを起こされる方でしたので……」

 言いにくそうに話すソフィーに、ローズはめまいを覚える。


(もしそのハロルド様がここにおられて、そしてお嬢様がみつかってご夫婦となられたら、きっとものすごい似たもの夫婦に……なんて恐ろしいご夫婦なのかしら)

 この館の関係者にどんな騒ぎが起こったのかは、なんとなく想像がついてしまう。ローズは、その騒ぎを身をもってよく知っていた。


 ソフィーは小さく咳ばらいをすると、話を続けた。

「それで、結婚に向けて急遽、レオン様をご当主とされることが決まったので、公爵様は当主の変更を国王へご報告に行っておられたのです」

 ローズがこの館へ来た時に公爵が不在だったのは、そういう理由だったのだ。