身代わり令嬢に終わらない口づけを

「どうか、そのままで」

「なんだ。やはりいらんのか」

 む、とした顔で言ったレオンに、ローズは微笑む。


「違います。そのダリアは私がもらいましょう」

「ならば」

「ですから、毎日この花を見に来ます。手折ってしまえばすぐにしおれてしまいますもの。地におけば、手折るよりもずっと長持ちすることでしょう。枯れるまでは、わたくしが頂いたこの花を毎日見にまいります」

 かすかにレオンが目を瞠ったが、何も言わずにその場に立ち上がった。そこでローズはまた気づいた。


 そのダリアは、この花壇においてもほんの数本しかないピンク色だった。

(あの時のこと……覚えていてくれたのかしら)