「ご自分のお立場をお判りなのですか? お嬢様はこのファルの街、いえセラーシナ王国においても一番の由緒正しき伯爵家の娘ですよ? その男だって、どこまで信用できるかわかったものじゃありません。軽々しく身分を明かしてもしかどわかされでもしたりしたら……」

「あの……失礼いたします」

 説教モードに入ったローズの声にびくびくとしながら、メイドが声をかけてきた。


「あら、何かしら」

 これ幸いとばかりに、ベアトリスはメイドに答える。まだ言ってやりたいローズは、それでも同じようにメイドに視線を向けた。

「お話の途中で申し訳ありません。旦那様が、お嬢様をお呼びです」

「お父様が?」

「はい。至急のご用事だそうなので、すぐにお越しください、とのことです」

 伯爵の呼び出しとなれば、ローズが邪魔をするわけにはいかない。しぶしぶローズは、ベアトリスを説教から解放した。


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