「これから出かけるが、夕刻には戻る。一緒に食事をどうだ?」

 はい、と言いそうになって、ローズは少しためらった。

 もう十分、レオンには近くで接してしまった。今日だって、ほとんど素顔を合わせてしまったのだ。これ以上レオンと親しくなるのは、後々ベアトリスと入れ替わることを考えるとあまり好ましくない気がする。

「また倒れてはいけませんので、わたくしはこちらで」

 目をそらして言うと、そうか、とだけ聞こえた。あきらかに落胆を含んだその声音に、ローズの胸がちくりと痛む。

「では、何か欲しいものがあったら遠慮なく言え」

 そう言って、レオンはエリックと共に部屋を出て行こうとする。

「あの」

 その背中を、思わずローズは呼び止めていた。レオンが振り返る。

「今日のお言葉、本当に嬉しかったです。あれは……あの言葉で、レオン様のお気持ちは十分に伝わりました」