「なぜ倒れたのか、原因はわからんのか? 必要なら、すぐに医者を呼ぶぞ」

「大袈裟ですわ。このまま休めば元気になります」

 まさかレオンの言動でぶっ倒れたなどとは、本人には言えない。


「結婚式も近いですから、奥様も緊張されているのでしょう」

 ローズの手からコップを受け取りながらソフィーが言った。

「今は大事な結婚式を控えた身だ。まずは、自分の体調を大事にするがいい」

 少しかがんだレオンが、ローズの髪に触れた。普段はまっすぐなローズの髪は、編み込みを解いたせいで、いくぶん波打っていた。その波をレオンはふわりと撫でる。ローズは瞬時に鼓動が跳ねたが、レオンのしたいようにさせておいた。

(暖かい手。お嬢様とは違う、大きな……)