「……なら、きっともっと……」

「な、なんでしょう?」

「いや。すまない。女性に慣れている者ならきっともっとうまい言葉がでるのだろうが……俺は不調法者でな。こんな時に、どんな言葉をかけたらいいのかわからないのだ」

 そんなもの、生まれてこのかた男性に褒められたことなど一度もないローズにもわからない。

「あ、あの、本当に綺麗ですよね、このドレス、お針子さんたちが上質のレースで半年もかけて縫い上げてくれたものなのだそうです。この細かい刺繍やデザインも最新のもので……」

「そうではない」

 一生懸命ドレスの説明を始めたローズに、しかめっ面を赤く染めた顔のままレオンは言った。

「俺が美しいと思ったのは、そのドレスを着たお前だ。そのお前を賛美する言葉を……残念なことに、俺は知らない」

「え……あ、あの……」

「そうか。来週には、そのドレスを着たお前の隣に俺が立つのだな。……楽しみだ」

 そう言って、レオンはローズに向けて笑んだ。