微かに吹いてくる潮風の匂い。
木漏れ日の向こうの、青い空。
どうやら、雨は止んだようです。
「あれ、うさぎさん」
男の子は目が覚め、立ち上がりました。
「雨、止んだみたいだね。良かった」
男の子とわたしは、さっきの砂浜に戻りました。
見上げた空には一本の、大きな虹の橋が架かっています。
「すごい!とてもきれいな虹だよ!!」
男の子は嬉しそうに両手を広げ、言いました。
赤、オレンジ、黄色、緑、水色、青、紫。
そうか、これがかもめさんの言っていた"虹"なんだ。
なんて美しい橋なのだろう。
虹に見とれるわたしの隣で、
ふと、誰かの声がします。
「ねえ、そのうさぎ。君のペット?」
見ると、他の子供たちが、
男の子に声を掛けていたのです。
「ううん。違うんだ。
この子は今日初めて会ったばかりの、
ぼくの友達なんだ」
「へえー、かわいい!」
女の子は、わたしの体を撫でました。
「あのね、今まで仲間はずれにしてごめんね。
本当はずっと、声を掛けようと思っていたんだ」
体の大きい子供が言うと、
男の子は笑顔になりました。
その笑顔は、わたしが見たよりもずっと、
とても楽しそうに見えました。
そして、
男の子は子供たちと一緒に、
砂浜を駆けていきました。
わたしは、大きくてきれいな虹が、
少しずつ消えていくのを見ていました。
「やあ、お待たせ」
かもめさんが空から降りてきました。
「突然、すごい雨に降られちゃって、
迎えに行くのに遅れてしまったよ」
「そうだったの」
とうとう、虹はきれいさっぱり消えてしまいました。
「そうだ、ヤパパ。
初めて来たこの島影の国はどうだった?
危ない目に合っていないかい?」
「うん、大丈夫だった。
むしろ、楽しい思い出ができたくらい」
かもめさんは安心したのか、
ほっとため息を付きました。
「そうか、そうか。それは良かったよ。
じゃあ、そろそろ帰ろうか。
もう少しでお日さまも西に沈む頃だから」
かもめさんの背中に乗り、
空に舞い上がると、
島影の国は遠く離れていきます。
良かった、あの男の子にたくさんの友達ができて。
もう、あなたは一人ぼっちじゃない。
大丈夫。もう大丈夫だよ。

