南の島のヤパパ



「見て、あの雲。


イルカの形にそっくりだ」


本当だ。


あの雲のイルカに乗ったら、


どこまで飛んでいけるかな。


「見て、あの大きな船。


ぼくのお父さんはああいう船に乗って


遠くの海に漁に出ているんだ」


お父さん。あなたには家族がいるんだね。


でも、今は遠くに離れているんだね。


「ねえ、うさぎさん。


君はなんだか不思議だね。


一緒にいると、元気が湧いてくるんだ」


男の子は楽しそうに笑いました。


わたしも不思議と心踊るような気持ちでした。


ところが。


突然空から、大きな雨粒がぽつぽつと降ってきました。


ひやっとした冷たい風が、砂浜を吹き抜けました。


「大変だ、天気雨だ。どこかで雨宿りしよう」


辺りを見回すと、さっきまで砂浜を


駆け回っていた子供たちはいません。


わたしは、男の子についていき、


砂浜から少しも離れた大きな木の下まで走りました。


雨はどんどん強くなり、


遠くで雷が鳴り始めました。


「ねえ、うさぎさん。


君はもうぼくの大事な友達だよ。


色んな話を聞いてくれる。


何も話せなくても、隣にいてくれる。


それだけで、ぼくはとても嬉しいよ。」


男の子は寒そうに、木の下にしゃがみこみました。


わたしは男の子の膝の上で丸くなりました。


このままじゃ、体が冷えちゃうから。


わたしがあなたをあっためてあげるね。


雨はずっと、長い時間降り続けました。


そして、男の子もわたしも、


雨が止むのを待っているうちに、


しばらくそのまま眠ってしまいました。