南の島のヤパパ



「ここが、島影の国だよ」


ついにやってきた。


ここが、いつも南の島から見ていた島影の国。


遠くから、何やら楽しそうな声が聞こえてきます。


「ねえ、かもめさん。もしかして、


あれがいつもかもめさんが言っていた、


"ニンゲン"っていう生き物なの?」


「うん、そうさ。


あの子たちはきっと"ニンゲン"の子供だね」


砂浜を楽しそうに駆け回る"ニンゲン"の子供たち。


そんな子たちを、ひっそり遠くから見ている


男の子がいました。


「ああ、ヤパパ。


やたらめったらにニンゲンに近づいちゃいけないよ。


何をされるか分からないよ」


「大丈夫、大丈夫」


かもめさんに止められながらも、


わたしは男の子のところへ走りました。


よく見てみると、その男の子は


なんだか悲しそうにうつ向いています。


ねえ、あなたはどうしてそんなに悲しそうなの?


男の子はわたしに気付いたらしく、


不思議そうにわたしを見ていました。


「あれ?どうしてこんなところにうさぎが?」


男の子はそっとわたしに近付いてきます。


そして、頭を優しく撫でてくれました。


「君、あったかいなあ」


ううん、あなたの手も暖かい。


とてもぽかぽかしてるよ。


その時、遠くで翼を羽ばたかせる音がしました。


「ヤパパ、ぼくちょっくら用事ができたんだ。


しばらく離れるけど、ニンゲンには気を付けておくれ。


それじゃ、また後で迎えにくるからね」


そう言うと、かもめさんは飛んでいきました。


男の子はわたしの隣に座り込むと、


ぽつりぽつりと話し出します。


「あのね、ぼく、皆と一緒に遊びたいんだけど、


仲間に入れてくれないんだ」


男の子は飛んでいくかもめさんを


眺めているようでした。


「だから、一人ぼっち。


こうして一人ぼっちでいるんだ」


一人ぼっち。


あなたは一人ぼっち。


わたしも、一人ぼっち。


誰もいないあの南の島でしか生きられない、


わたしも本当は一人ぼっち。


「とても、寂しい。寂しいんだ。


皆が楽しく笑っていても、


ぼくはあの中にいない」


夜、いつも眺めていた星空の下。


星たちは皆身を寄せ合うけど、


わたしは身を寄せ合う仲間はいない。


小さな岩の洞穴で丸くなり、


ひたすら寂しさに耐えながら


朝が来るのを祈っていた。


「でもね、今はちょっぴり寂しくない。


君がこうして隣にいるからね」


寂しくない。隣にいるから。


それなら良かった。


あなたの心を、少しでも温もりで


満たせたなら、


あなたと同じように、わたしも寂しくない。