今日もいつもと変わらず、穏やかな日。


波がざあざあと砂浜を行ったり来たり。


潮風も吹いてきます。


大きなヤシの木の下で入道雲を眺めていると、


遠くの空から、かもめさんが飛んできました。


「やあ、ヤパパ。こんにちは」


「こんにちは、かもめさん」


かもめさんはわたしの隣に降り立ちました。


「今日はね、東のほうで、雨が降って


見事な虹が見えたんだ!」


「わあ、それはすごいね。」


かもめさんは得意げに翼を大きく広げて言います。


「外の世界のことが知りたいなら、


何でもぼくに聞いておくれ。


この翼があれば、どんなところにもひとっとびさ」


「それは頼もしいなあ」


遠くの彼方の水平線。


うっすら島影が見えました。


「あのね、かもめさん。


今日はね、お願いがあるんだ」


「え?お願いってなんだい?」


かもめさんはきょとんとしています。


「わたし、あの島影の国に行ってみたい。


かもめさんのお話はとても面白いけど、


自分の目でもちゃんと見てみたいんだ。


外の世界がどんな場所かってね」


そう言うと、かもめさんは慌てました。


「でもヤパパ、君はこの島でしか


生きられないって、外の世界には出られないって


言っていたじゃないか」


「ううん、いいの。


ずーっとこの"世界"で、死ぬまで


何も知らないままいるよりかは全然いい」


かもめさんはため息を付きました。


「そこまで言うなら仕方がない。


特別に今日一回だけだからね」


「ありがとう!かもめさん」


とうとうこの時がやって来た。


初めて外の世界に行ける。


そう考えただけで、


胸の中はわくわくとドキドキの気持ちで


いっぱいになりました。