わたしはヤパパ。


南の島に住むうさぎ。


うさぎなのに、ヤパパって名前、


へんてこだって思うでしょ?


あのね、この名前、誰がくれたか分からないの。


自分がどうやって生まれたかも知らないし、


誰がわたしを生んでくれたのかも分からない。


だけど、ずっと前からここにいるんだ。


この島にずっと一匹で。




寂しくないって?


そんなことないよ。


時々かもめさんが空から飛んできて、


色んな話をしてくれるんだ。


今日は、大きくて立派なクジラが、


潮を吹いていたとか、


イルカたちが西の海を渡っていたとか、


かもめさんは色んなことを知っているんだよ。


もちろん、あの海の先に見える、


島影の国がどんな場所なのかってことも。


え? わたしは知らないのかって?


うん。知らないよ。




だって、


わたしはこの島にしか居られないから。


大きくてもくもくした入道雲も、


耳を済ませば聞こえてくる波の音も、


まぶしいお日さまの光も、


全部描かれた、


この『世界』でしか"生きられない"から。




だから、こうして


かもめさんから"外"の世界の話を聞いて


あれこれ想像を巡らせたりするんだ。


雲の上から見た海ってどんな感じなんだろうとか、


"山"ってどんな形?とか、


"川"の水ってしょっぱい海水と違って


どんな味がするのかな?って。



もちろん、本当は見てみたい。


この"世界"から抜け出して、


青くて広い海を渡って、


あの島影の国をこの目で見てみたい。


だって、この世界にずーっといるのは


退屈なんだもの。