「すいません。どこかでお会いしたことありましたっけ?」

「・・・覚えてねぇのか、思い出したくねぇのかわかんねぇけど、それならそれでいい」


なんだ、それ。

いつの間にこちらに来たのか、桐島が目の前に立つ。


「今度は、絶対に逃がさねぇ。覚悟しとけ、美和」


挑発的な顔をしながら、桐島の瞳は切なげに揺れていた。

あたしは桐島に、何をしたのだろう。

全く記憶にないが、それがまた桐島を傷つけているような気がする。


「お疲れ、様でした」


これ以上、今は一緒にいたくない。

あたしは言い捨てるように、その場を後にした。