「あの。失礼ですが、できるんですか」


ふと思った疑問をぶつけると、桐島は小さな笑みを溢した。


「俺、経済学部だったんだけど」

「そうですか。なら、お願いします」


再び自分の仕事に戻ろうとしたら視線を感じ、そちらを見る。


「何か」

「・・・いや」


歯切れの悪い桐島の言葉に疑問を感じたが、問うこともなく仕事を再開した。

桐島が仕事を引き受けてくれたおかげで、予定よりも早く片付いた。


「終わったか?」

「はい」

「こっちもだ。これで良いか、確認してくれ」


渡された書類に目を通し、「大丈夫です」と伝え、書類を整理する。


「なぁ、廣木」

「何ですか」

「お前、覚えてねぇの?俺のこと」


え?

桐島の言葉に引き寄せられるように、視線が向かう。

だが、あたしの記憶の中に桐島はいない。