「そう思う俺って、良い男だと思わねぇ?」


悪戯そうな笑みを浮かべて言う樋口に、あたしは呆れる。


「はいはい。これから予定あるから、そろそろあたし帰るよ」

「あぁ、そうか。ありがとな、付き合ってくれて」


別に、礼を言われることをした覚えはない。

むしろ、あたしが一緒に行きたかった。

美香さんが病気に侵されながら、どんな夢物語を描いていたか、知りたかったから・・・

そして、樋口に自宅の近くまで送って貰った。


「じゃ、また来月」

「うん」


車を降りようとするあたしのことを、「美和」と樋口が引き止める。


「お前のことは、俺が絶対に死なせねぇ」


真剣な瞳で、医師で在るくせに、そんな言葉くれる樋口だから・・・

あたしは、今日も生きているんだと思う。