未来の約束

10歳も年が離れていることもあり、姉と一緒に遊んだ記憶がない。

それに人生の大半を、姉は病院で過ごしていた。

だからか、あたしにとっては「姉」と言う認識が低い。

気付けば「お姉ちゃん」ではなく、「美香さん」と呼ぶようになっていたし。


「よし。行くか」


樋口は鞄の中からスケッチブックを取り出し、パラパラとページを捲る。


「今日は、此処に行こう」


そう言って、あたしに見せてくれる。

このスケッチブックは、生前美香さんが書き残したものだ。

未来を信じ、樋口と一緒に行きたかった場所が書かれている。

そんな美香さんの夢物語を、叶えてあげようとしている樋口は健気な男だ。

この世に、もう美香さんのはいないというのに・・・