未来の約束

なので必然的に、常務と2人きりになる。


「どうして、こんな急に異動なんですか?」

「異動は、建前だ」

「建前?」


常務は、あたしの視線から目を剃らす。

そして、口を閉ざした。

あたしは、この男をよく知っている。

本社では有名な頭の切れる、優秀な人間。

でも中身はとても優しく、穏やかな人間だ。

そんな男の握り締めていた拳が、小さく震えていた。

こんな姿を見るのは、もう何度目だろうか。

年月は過ぎたが、記憶に新しい。

そして、あたしは悟る。

見たくない近い未来が、現実として降りかかることを・・・


「何か、聞いたの?」

「洋祐くんを責めないでくれ」


バカ樋口。

あたしに話す前に、なんでお父さんに話すかなぁ。