ほんと、いい子だ…。


そんなことを考えていた時、廊下から「きゃ!」という短い声に私は目を向けた。


どうやら阿久津くんが、阿久津くん信者とぶつかってしまったらしい。


「…悪い。大丈夫か?」


そう言って手を差し出す阿久津くん。


「だ、大丈夫で…いっ…」


女の子はその手を取って立ち上がると、顔をゆがめた。


「足…痛めた?」


「ぜ、ぜぜ、全然大丈夫です!!」


真っ赤になりながら顔の前で手を振る女の子。