周りでも皆欲しがる彼女という存在。
俺からしたらどうしてそんな面倒な鎖に縛られたいのかほんと不思議


毎日したくもない所在確認?
部活で死にそうで、即寝たいのに連絡しないと怒るとか
記念日にはデートしてプレゼントしないととか
手間と引き換えにいつでもヤレる権利があるとしたって

そうまでして一人の女に固執したい気が理解出来ない。


一応俺も男だし、女の子が嫌いな訳はない。
くっついてると柔らかいし気持ち良い事は大好きだ


でもそれはその気になりゃあ相手は見つかるし

・・言い方悪いが飽きたら別の子に変えられる


何より、自分を所有物の様に扱われるのが嫌だ




「お前が好きになるのはどんな子なんだろうな。」
颯太は爽やかな顔して言い放つ。

そんな台詞、お前以外が言ったら鳥肌モンだ。
「何それ、俺女の子大好きだけどー。」

颯太が笑う。そういうんじゃないよって



「いつか、お前にも心から大事に想える人が出来たら良いな・・」




その時何気なく聞いたその言葉
俺はまた、颯太の口から何年後かに聞く事となる





その時の俺からは全く想像もつかなかった







「で?顧問と何話してたんだよ。キャプテン、」
寒気のする話題を変えよう。

それなりに強豪校なうちの部をまとめている颯太。昼にわざわざ出向くなんてと聞けば
口ごもるなんて珍しく、颯太が俺を見ない。

「あの大学、辞めるかも・・」
は?


颯太はずっと前からバスケ推薦で俺と一緒の大学行きが決まっている。勿論合否は受けて見ないとと言いながら俺はともかく颯太の場合は合格は確実で
「まだ誰にも話してない・・他の道はどうなんだろうって先生に相談・・」
「はあっ?バスケ辞める気かお前?」

気がつけば颯太に詰め寄る自分が居た。


自分でも自覚している。バスケ以外のものにはいい加減な俺がここまで頑張れているのは──


誰と一緒だからだよ。


俺の剣幕に、「だよな。」と当の颯太は笑ってやがって、
「ごめん、ちょっとふざけてみただけ。勿論顧問にも怒られたよ。」
・・って、言葉にしたんじゃねえかよ。
だってこれだけの選手が辞めるなんて言い出したら驚くだろ。


しかも冗談でそんな事を言う奴じゃない

他の道って・・バスケにどっぷり浸かっているこの生活のどこに他の道があるというんだ?


親の反対か?いや、逆にここは全力で応援してる家族だというのは知ってる


仲間内にも居た。大学まで行ってバスケなんて現実を見ろとか遊びは終わりだとか親に言われた奴等が。

遊んでここまでやってきたなんて思っている奴なんて居なくても、現実問題、高校3年の『ここ』で『遊びと言われたもの』を終わらせる仲間も多かった

でも颯太の実力に至ってはスカウトの数も質も周りとは違った、そんな中颯太は俺も一緒にと言ってくれた大学に決めたんだ。


今更何があってそんな事を・・





ひとつの存在が頭をかすめる



「・・日高さん?」

彼女の名前を出すと
一瞬、颯太の目が泳いだのを見逃さなかった