すると突然抱きしめられた。


「ちょっと!なにするん…」


最後まで言葉を言う前に、遮られた。
しかも、私の唇に柔らかいものが当たっている。
…整った顔のドアップ…

もしかして、私キス…されてる?

突然過ぎて、頭がついていかない…

だんだん濃くなるキスに頭がぼーっとしてきた。


「こんなんでいいんだ…」


始まるのは突然だけど、終わるのも突然だった。

今のは…さっき私がノートに書いてたやつ…
もしかして、書いてある通りに実行したの?

少し物足りなさそうな渡辺さんは、小さく呟いてノートをパタンと閉じた。


「櫻井千夏、この妄想実現させてやるよ。
あ、俺の事は貴大って呼べよ?
明日から楽しみだなぁ?」


渡辺さん…じゃなくて貴大さんは、そう言って、見たことも無い意地悪そうな笑みを浮かべて帰って行った。


「あ、私のノート…」


持っていかれたことに気づいたのは、もう貴大さんの姿が見えなくなってからだった。