けど、その望みを叶えてくれる人はいない。

なら、自分で殺すしかない。

私は走った。

靴を脱ぎ捨て、スリッパもはかず、誰もいない階段をかけ登った。

屋上へ続くドアを勢いよくあけた。

そこには、清々しいほどの青い空が広がっていた。

風が私の髪をなびかせながら、吹きぬける。

あぁ、なんでこんなにキレイなんだろう?

コンクリートの屋上を、ゆっくりと進む。

錆ついた柵へ向かって。

靴下でふむコンクリートは、こんな季節でも、少し冷たい。

ひんやりとした感触。

私もついに死ぬのか。

つまらない人生だったな。

何の為につけているか、分からないほどに低い柵を乗り越る。

1段高くなった所にのぼり、下を見る。

3階建てとはいえ、やはり高い。

ただ、不思議と恐怖はなかった。

このくだらない人生が終わる...そう思うと、なんだか嬉しい。

いじめられた1週間。

それほどひどい事をされた訳じゃないのに、私の心はズタボロだった。

もしかしたら、私はもっと前に死にたかったのかもしれない。

やっと、楽になれる。

飛び降りようとした瞬間だった。

「ねぇ。」

私以外誰もいないはずの屋上に、声が響く。

振りかえると、1人の少女が立っていた。

私と同じくらいの身長なのに、髪がすごい長い。

黒色の髪は、腰くらいまで伸びていて、目が、パッチリしている。

肌は白く、顔も整っている。

スタイルも抜群だ。

「本当に死ぬの?」

彼女は、こちらに来ながら、天使のように微笑む。

「あの人達に復讐しない?」

「えっ」

柵の1歩手前で彼女は止まり、私の方に手をさしだす。

「あなたが死ぬ必要はない。だって、悪いのはいじめてくるあの人達。」

そうでしょ、というような目で彼女は私を見た。

その通りだ。

そうだ、なんできずかなかったんだろう。

私が死ぬ必要はない。

本当に必要なのは、あいつらのほう。

「...そうだね。」

1段高くなった所から降り、柵を乗り越える。

「ありがとう、きずかせてくれて。」

「別に、大したことじゃないわ。」

そう言い、また微笑む。

「あなたの名前は?」

「マナよ。よろしく。」

彼女が手をさしだす。

私はその手をギュっと握った。

その日から、私の人生は一変した。

私の復讐が、始まったのだ。