裏切り者

[■■side]

今日は最悪の1日だ。

もう、復讐なんてしなくていいから…

こ ろ し て

~4時間目終了直後~

今日もマナと打ち合わせ。

昨日と同じように、屋上へ行こうとした時だった。

教室を出ると、ガシッと腕を掴まれ、そのまま後ろへ引っ張られた。

体制が整っていなかった私は、いきなりの攻撃に動揺し、転んでしまった。

尻もちをついた私は、迫ってくる影に、嫌な予感を抱いた。

まさか…

「やっと見つけた。」

私を上から見下ろす、4つの影。

ニタニタと気持ち悪く笑う4人に、吐き気を覚える。

「ご飯、一緒に食べよ。」

そこからの事は思い出したくもない。

予鈴が鳴って解放された私。

4人は「また、明日ねー」とふざけた事を言い残し、さっていった。

後に残された私は、立つ気力もなく、ただただ、座っていた。

何で、何で!

私は、やっぱり死んだ方がいいの?

涙が頬をつたう。

死ねって事なんだよね、きっとそうだよね。

マナという味方ができで、なのになんにもできない。

いじめられ、相談もできず、毎日毎日マナと会うだけに学校行って。

私に生きている意味も無い、権利もない。

「生きている意味も無いって、思ったでしょ。」

頭上から聞こえてくる声。

私のそばじゃない。

もっと、もっと上…

「あっ…」

校舎の2階でも、3階でもない。

屋上から聞こえた声。

柵から身を乗り出し、こちらを見下している1人の人間。

マナだ。

私は何かの衝動にかられ、屋上まで走った。

何で走ったのかは分からない。

唐突に、体全体が、細胞の1個1個がマナを求めている。

屋上まで、走った私は、着いた時にはヘトヘトだった。

重たい扉を開けると、柵の所にマナがいた。

マナ…

声に出したいが、息が乱れて言えない。

静かな屋上に私の息切れだけが響いた。

「ねぇ、早く実行したいでしょ?」

マナは真面目そうに、言った。

実行というのは、復讐についてだろう。

もちろんしたい。

あいつら絶望した顔を早く見たい。

私はしっかりと、頭を縦に振った。

マナはクスリと笑い、私の方へ歩いてくる。

「なら、今すぐしましょ。」

「えっ…」

今すぐ?そんな事ができるの?

「実はね、もう既にある程度の情報は掴んでいるの。なんなら、今すぐ公開しても、社会的死はさせられる程にね。」

無邪気な女の子のように、楽しそうに言うマナ。

そんな事が…

やっぱりマナはすごい。

「実行する?」

「………もちろんよ。」

マナは笑った。

私もつられて笑った。「善は急げよ。早く実行しましょ。」

マナはそう言って、ポケットを探りだした。

だいぶ息が整った私は、マナのポケットから何が出てくるのだろうか、ドキドキして見ていた。

何を、出すんだろう?

ハイテクな物が出てくるかと思ったら、マナが取り出したのは、スマホだった。

スマホもスマホでハイテクな物だが、少しガッカリした。

「マナ、スマホで何をするの?」

マナは私の質問に答えず、スマホを操作する。

真剣な顔に、それ以上追及する事をやめ、マナを見守った。

「よし、準備は完了した。あとは、ここをタップするだけ。」

スマホの画面を私に向ける。

SNSの投稿画面。

おそらく、いまさっきマナは、投稿する内容を打っていたんだろう。

「あなたがここをタップすれば、あの人たちは社会的死する。さぁ、押して」

マナは私にスマホを渡す。

やっと、やっと解放される。

もう、いじめられない。

あの人たちの顔を見なくてすむ。

だけど、私の中では、本当にそれ程の効果があるのかを、心配していた。

たった数日で何が集められたんだろう?

何か決定的なのがあるの?

心配と興奮で、頭が爆発しそうだ。

タップしよう。

スマホを持っている手が、タップしようとしている指が震えている。

マナの方を見ると、視線にきずいたのか、私のほうを向いて微笑む。

どうぞ、という事なんだろう。

私は何に怯えているのかは分からない。

だけど、私がタップをしたのは、興奮の方が勝ったからなんだろう。

結局、マナも、あいつらも、両親も、神様も、私を殺したかったのかもしれない。