長い廊下を歩いて食卓につく。



「ユキばあちゃん、おはよう。」


「おはようさん、孫や。今日は始業式じゃったか?」


「うん、そう。」



ユキばあちゃんと二人でちゃぶ台の食卓を囲む。
メニューはもちろん和食。


私のおばあちゃん、神宮寺ユキは神社の宮司をしている。
つまり、私の家は神社なの。



私の両親は私が生まれたばかりの頃に事故で無くなった。
ユキばあちゃんも一緒に事故にあって、両目が開けなくなってしまった。


でも、毎日の朝晩の祈祷のお陰でぼんやりと周りが見えるらしく、日常生活に支障はない。


………………………… らしい。



まぁ、こうやってご飯も作ってくれるんだから、疑ってもしょうがないね。




「味噌汁美味しい。」


「そうかそうか、孫は赤味噌のが好みかのう。」





嬉しそうに微笑むユキばあちゃん。
後ろでおだんごに結わえた白髪と、優しい目元が特徴。



でも、ユキばあちゃんは私の事を名前で呼ばない。
それどころか、自分の娘や娘婿の事も名前では呼ばない。



だから、私は両親の名前を知らない。





そりゃ小さい頃は気になって何度か聞いたことがあるけど、教えてはもらえなかった。



女手ひとつで育てた娘を事故で亡くして、ユキばあちゃんが悲しんでいることは幼い私にも分かったからそれからは何も聞かなかった。