━━━━━━カンッ! カンッ!!
「ッはぁ……… はぁ…… 」
「どうした~? もうへばったか~?」
「………っ、まだまだぁーーー!!!」
ニヤニヤすんなぁ~!!
「おい!踏み込みが浅いぞ!!」
「━━分かってるって! うわぁぁッ!!」
━━ドシャッ!! ゴンッ!!
「痛ぁぁぁぁぁぁッ!!」
「すっごい音したな、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……脳細胞が死んだ………」
「じゃあ、今日はここまでにしよう。台所で氷もらってくるか」
「うん……」
うぅ…… 頭打った……………
というか、もうちょっと手加減してくれてもいいんじゃないの?
私は頭をさすりながら、しぶしぶ立ち上がった。
今は5月の初め。
みんなの仲間になってから1ヶ月がたちました。
今は、人間界に戻る時までに何かできるようになりたいな~と思って、毎日水瀬くんに剣道を習っています。
これがまぁ、スパルタ教師なんです………
運動オンチなのにぃ……
でも、1ヶ月の特訓で大分上達したんだ!
ちょっと剣道って楽しいかも!!
「━━おーーい!いくぞ!」
「はい師匠!!」
剣道の稽古場を出たところで、水瀬くんが待っていてくれてた。
ここの剣道場すごいんだよ!
広いし!
部屋の正面に「根性」ってかかれた紙が貼ってあるの!
最初は"部活か!"ってツッコミを入れさせてもらったけどね!!
私は裸足のままで草履をはいて、水瀬くんの背中を追っかけた。
あとね、ここの剣道場が唯一水瀬くんと二人っきりでいられる場所なの。
━━━━ッて! 別に好きとかじゃないから!!
「お、お待たせ」
「おう、頭大丈夫か?なんか顔赤いぞ?」
「だッ 大丈夫!」
「そっか、よかった」
そう言ってふわっと笑う。
「~~~~~!」
はい、反則です。かっこよすぎます。
水瀬くんと並んで、みんながいる建物までの道を歩く。
………なんかわからないけど、水瀬くんといると切なくなる。
あと何日一緒にいられるか考えてしまう。
最初に助けてもらった時、水瀬くんのきれいな目が頭から離れなかった。
今でもその目で見つめられると、時が止まったようになる。
━━━━━ッて! これは恋じゃないから!!!
…………叶わないって分かってるのに恋するほど辛いことはない。
私は、水瀬くんにとってただの大使の一人だから。
━━もし叶ったとしても、あと2ヶ月で2度と会えなくなってしまう。
…………………そんな恋辛すぎる。
「神宮寺、今日はどっか行くのか?」
「あ……… うん! これから郵便局でバイト!
それから、るり姉と夏と商店街に行ってくるね。 今日月給をもらえるんだ~」
人間界に帰るまでにバイトもしてみたくて、郵便局で手紙を届けるアルバイトをしてるんだ!
天上界のいろんな所をみてまわれて、いろんな人と仲良くなれて、ホントに楽しいんだよ!
「そっか、最初はどうなるかと思ったけど、ちゃんと板についてきたな」
「うん! 先輩が優しく教えてくれたから仕事もすぐ覚えられたし」
「確か今日から新しい班で仕事だったか?
1ヶ月交代って言ってたよな?」
「そう!」
覚えててくれたんだ、嬉しい…………
「今日から、土門 修吾(どもん しゅうご)先輩にお世話になるの。 この前ご挨拶させてもらったんだけど、凄い優しくて━━━━
………………水瀬くん? どうかした?」
「いや、」
「……………?」
「急に悪い、修吾とは幼なじみなんだ。」
「そうなんだ!」
「俺に姉上がいたって話、してなかったっけ」
「うん、初めて聞いた」
"いた"っていう言葉が気になったけど、聞かないでおいた。