SIDE:蒼太





って、こいつ、じゃなくて美桜

ほんとについてくるのか?!




俺は長い廊下を歩きながら後ろを物珍しそうについてくる美桜に驚いていた。







ほとんど初めましてのやつに普通にホイホイついてくるか?


そんなにすっとぼけたやつには見えないけどな。




「……… おい、俺が怪しいやつだって思わないのか?」




「……… え?」





え?じゃねぇ



「いやいや、思わないよ?
助けてもらったし、水瀬くんが嘘を言ってるようには見えなかった。」



「何を根拠に言ってんだ?」



「"目"だよ、水瀬くんの目が嘘じゃないって言ってた。」



「ふーん、って言うか目が青いっていうのは?気持ち悪くないのか?」



「人間界にも目の青い人はいるよ? 外国の人がほとんどだけど。っていうかほんとに綺麗だよ!いいなぁ!」






驚いた。 美桜より前にも何十人もの人間がここに来たが、こんなに抵抗なく俺らを受け入れたのは美桜が初めてだ。





「それと、見た目で人を判断しないっていうのが私のモットーだから!」





美桜はそう言って笑った。


こいつ、ほんとに見てて飽きない。






思えば、美桜が他の人間と違うと思ったのは一番最初に会った時だ。


美桜は今までの誰よりも怪我をしていた。


それは、ディアヴォロスに抵抗したからだ。




今までの人間は初めて見るバケモノに怯え、ディアヴォロスの指揮下にすぐに屈する。


それを俺らが助け出すというのがセオリーだった。


そうした方が人間が怪我をしなくて済む。






でも美桜は違った。



こいつは瀕死の大怪我をして、あと少し遅かったら命は無かった。







強い。






強い人だと思った。





と思ったら、今朝の茶番。



思い出すだけで頬が緩む。






一体こいつは何なんだ。



この人のことをもっと知りたいと思った。






こいつの強さの根源が知りたい。







そうしたら、何か変われる気がする。







未だに過去に捕らわれて、恐怖に屈している俺も変われる気がする。







窓から青い空が見える。









姉上が死んだ日も、こんな青空だった。












FIN.