「俺、次は頑張るから。絶対に同じようなことなんて起こさせねー。」

「…っ」

私は何も声をかけれなかった。
真剣な眼差しをどこかに向ける龍臣。
1番悔しいのは、マネージャーの私よりみんなだ。

今年の夏。
つい数ヶ月前だ。
甲子園の予選、第3回戦で負けた。
七回裏で、ピッチャーは龍臣。
4-7とリードしていた。
ワンアウト 一、三塁だった。
龍臣がキャッチャー、宮野くんのサインを見て振りかぶった。

バシンツ
ほんの一瞬でミッドに納まったボール。

「ストライク!」

それは、アウトローだった。
打者には落ち着きがあった。
打てないのではなく、見送ったのだと。
その打者は、ベンチのコーチを見て…
笑った。
目をギラつかせて笑った…ように見えた。

次も龍臣は宮野くんのサインを見て振りかぶった。

カキーーン
バッドの金属音が響いた。
伸びるボール。
センターとレフトが落ちるであろうところまで追いかけた。