小さい頃、会うたびに感じる冷たい視線が嫌だった。
必死でいい子にしても、叔母さんに褒められることは一度もなくて。
ほんの少しのことでも、ひどく怒られた。
いつしか、叔母さんの前に行くと うまく笑えなくなった。
――けれど、今は、
「梢、今更許してくれなんて言わないわ。
…でも、もしよかったら、時々顔を見せてはくれないかしら…。」
「はい…、また来ます。」
――意識しなくても、普通に笑うことができた。
その瞬間。
おばさんが、はっと息をのむのが分かる。
「…やっぱりあなたは、義兄さんによく似てるわ。」
そう言った叔母さんの目は、少しだけ涙ぐんでいた。
…あたしは、お父さん似。
敬子叔母さんはやっぱり、ただお父さんのことが好きだっただけ。
きっと お母さんと同じぐらい、お父さんのことを愛していたんだ。
庭で静かに泣いていた叔母さんの姿を思い出して、胸が痛くなった。

