昔から、お正月くらいしか会わなかった敬子叔母さん。
お父さんが亡くなってからは、特に会う機会も減って。
最後に会ったのも、もう随分前のことだ。
その叔母さんが、今、このドアの向こう側にいる。
「ほんとにいいの?」
「…はい。」
――さっき先輩には、
「ドアの前で待っててほしい」と伝えた。
このまま先輩についてきてもらうのは簡単だし、心強いけど。
それじゃ、叔母さんと向き合えないと思ったから。
「…わかった。じゃあ、がんばっておいで。」
紙袋をあたしに渡して。
ずっと繋がれていた先輩の手が、離れた。
「いってこい。」
そのことに寂しさを感じる間もなく、そっと背中を押される。
あたしは振り向くことなく、ドアをノックして、ゆっくりと開けた。

