「…え?」
知らない?どういうこと?
「や、俺は梢についてきただけだもん。」
「えぇぇ!?」
驚きの答えに、思わず大きな声を出してしまった。
近くのおじさんがコホンとわざとらしく咳払いしたのが聞こえて、慌てて口をつぐむ。
「先輩はそれでいいんですか!?せっかくの休日ですよ!?」
先程のおじさんを気にして コソコソと喋ったあたしを気にすることなく、先輩は普通に答えた。
「うん。平気。」
平気、って…。ほんとに?
だって、駅前にいたってことは、誰かと待ち合わせでもしてたんじゃないの?
…女の子、とかさ。
そんなあたしの考えを読み取ったかのように、先輩はニッコリと笑った。
「昨日も、おとといも、梢に電話かけようとしたんだけど、拒否されたら…って思うとかけられなかったんだ。
それで、とにかく頭いっぱいで。少し気分転換しようと思って、ブラブラしてただけ。」
「そしたら梢いるんだもん。まじ焦って、気がついたら走ってた。」と付け加えた先輩は、少し照れくさそうで。
不覚にも、キュンとした。

