「いやー…恥ずかしかったな。」
バスの中。
さっきの余韻なんて全く残さない先輩が、あたしの隣でケラケラと笑う。
「先輩のせいですよ!!」
「ごめんごめん!」
切なげな声と言葉は頭の中にしっかりと残っていたけれど、
あたしも 何事もなかったかのように返していた。
本当はあの後、このバスに乗らないことも考えたんだけど(だって恥ずかしいじゃん)
次のバスの時間を考えると そうもいかず、慌てて乗り込んだあたし達。
おそらく、運転手や他のお客からは、『真昼間のバスロータリーで抱き合っていた迷惑なバカップル』
とでも思われているのだろう。
…あぁぁ…ほんと恥ずかしい。
「…ところで先輩はどこに行くんですか?」
なんとか気を取り直し、ふと湧き上がった疑問を素直に口にする。
てっきり、先輩は駅前でたまたまあたしを見つけて、走ってきたんだと思っていた。
それなのに、一緒に乗ってきた先輩。
もし乗るつもりでロータリーまで来て、そこに偶然あたしがいたんだとしたら。
まだバスは来てなかったのに、汗ばむほど走る必要はあったのかな。
「…さぁ?知らない。」

