あたしの目の前には、目を見開いた先輩。
視界の端で、リエさんも息をのんだのがわかった。
掌が、痛い。
でもきっと、リエさんの心はもっともっと、血が流れるぐらい、
痛かったと思うから。
――だから、
平手打ち、した。
「先輩はっ…先輩は何もわかってない!!」
あたしの頬も、涙が伝う。
リエさんの、先輩を好きだって気持ちがわかって悲しかった。
優しい、あったかい先輩が、リエさんを傷つけるのが悲しかった。
でも1番悲しかったのは、叩いた直後。
先輩が、泣きそうに歪んだ顔をしてたこと。
なぜか確信があった。
単に頬が痛かったんじゃない、と。
…あたしが、先輩を傷つけてしまったのだ。

