週明けて、月曜日。
土曜日はおばあちゃんの家で、日曜日はお母さんと買い物。
いつものような週末を過ごしたあたしは、いつものように遅刻ギリギリになった。



「小野チャンおはよー!」

「おー。珍しく間に合ったな。」



「…おはようございまーす。」

「おはよー。」



校門に立っていたのは、少し眠そうな小野チャン。
(おそらく、今週の当番なんだろう。)
やる気なさそうに立ちながらも生徒と挨拶を交わすその姿を見て、おばあちゃんの言葉を思い出した。


『そうねぇー…私にはよくわからないけど…
慎二…つまりあなたのお父さんへの感情と一緒になっているということはない?』


…違うよ。
小野チャンは小野チャンだし、お父さんは、お父さんだもん。

小野チャンが好きなのかどうかは別として、お父さんと混同してるってことはない、と
自分に言い聞かせながら、女生徒と楽しそうに話す小野チャンの横を無言で通り過ぎ―…
――ようとしたんだけど。


「及川―、おまえ無視する気だったろ。」

「そんなことないですって!おはよーゴザイマス。」


意地悪く笑う小野チャンに、慌てて挨拶する。
…だって、楽しそうに話してたから。気付いてるなんて思わなかったんだよ。

ほら、話してた女の子が小野チャンの後ろからあたしを睨んでる。
こうなるのがイヤだったから、そのまま知らんぷりして行くつもりだったのに。


「そういえば、体調大丈夫なのか?」


そう言われて、金曜日のことを思い出す。
授業の終わり頃、小野チャンがみんなのものなんだって思ったら なんだか苦しくなって、変な態度とっちゃったんだっけ。
あのときも、「大丈夫」って言ったけど、小野チャンは気にしててくれたんだね。


「うん。大丈夫だよ。」


相変わらず鋭い視線を向けてくる女の子のことも気にならなかったわけじゃないけど、少しだけ心があったかくなった。

あたしは大勢の中の1人だけど。
それでも、小野チャンが ちゃんとあたしのこと見てくれてるんだって、そう思うだけで安心するんだ。