「私…、今日学校に来たのは、桑田に頼まれたからなの。」
千佳ちゃんは、廊下の窓から薄暗い空を見上げた。
「夢芽は気付いてないと思うけど、桑田、夢芽の命を真剣に守ろうとしてるよ?」
「え?」
あの…
私にイヤミばかり言ってた桑田が??
「昨日の夜、桑田にせがまれて、夢芽には悪いけど、夢芽の書いた遺書を桑田と読んだんだ。」
な…!
何なの?アイツ!
勝手に人の遺書を…!
千佳ちゃんはまだ更に話を続けた。
「夢芽、お父さんとお母さんにすごくたくさん、感謝の気持ちを書いてたんだね。それだけじゃない。私にも、桑田にも、山内先輩にも。」
千佳ちゃんは、薄暗くなった廊下の中で、優しい笑顔をこぼしていた。
「私、読んでて涙が出てきたよ。夢芽、まだ生きてるのにね。でも、まだ生きているからこそ、絶対に死なないで?」
…千佳ちゃん?
「桑田は夢芽に嫌味しか言わないかもしれないけど、実は一番、夢芽のことを心配してるから。桑田のためにも…、絶対に生きてね。」

