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仕事終わりの時間、やっぱりなっちゃんはステファンに現れなかった。


リョウスケさんにちゃんと断りを入れ、
1人でアパートへと帰る。









白杖の先から伝わる、
いつものアスファルトの感触。


危険な物は無い事が分かっていても、
私の足取りはとても重たかった。


それでも、リョウスケさんに言われた言葉が私の両足を突き動かす。


このまま・・ケンカしたままは・・やっぱり良くない。


仲直りしないと・・。

なっちゃんに・・ちゃんと謝ろう・・・。


昨日は感情的になってごめんって・・。

ちゃんと涙を流さないで言おう・・。


そして・・もう1度、
私の想いをちゃんとぶつけよう・・・・。







“コンッ”


「・・・・・。」


白杖の先の感触に反応して、
ゆっくり腰を下ろす。


・・・・うん・・植木鉢だ。


白杖が当たった先、

3つ横並びした壺だと認識して、
アパートに帰ってきたと分かった。


「・・・・・・・・。」

そのままゆっくりと私達の部屋、
103号室へ向かう。