「私が屋敷の掃除ですか?」

白金色の長い髪をサラリと揺らし少女は首を傾げた。

白魚の様な指先でカップを持ちきょとんとした顔で首を傾げるその姿は地上に舞い降りた天使の様だ。

そんな少女に目の前に座る男性は人の良さそうな笑みを浮かべて頷く。

「あぁ。
陛下に頼まれたんだ。
シェリルに掃除でもさせて心の垢も削ぎ落として欲しいってね。」

「私の心は純白なんですが…。
というか父様酷いですね。
私のナイーブな心が傷付いたらどうしてくれるんでしょうか。」

「心がナイーブな子が前宰相様の鬘取って新しい鬘被せて新作の鬘の商品宣伝したりしないと思うんだ。
それで陛下を激怒させてお小遣い減額と夕飯抜きになんてされないと思うんだ。」

「あの前宰相って前から鬘ズレてて気になってたんですよね。
わざわざ新しい鬘をプレゼントしたと言うのに恩を仇で返すとは…。」

「多分前宰相様は恩だとは思ってないんだと思うよ?」

「人の心がないんですかね?」

「前宰相様もシェリルには言われたくないと思うなあ。」

男性の言葉にシェリルはブスッとむくれる。

男性は頬杖を付いたまま苦笑を浮かべた。

「毎回思うけど本当にシェリルってキャロルに似てるね。」

「クリス叔父様も思われますか?
皆に言われるんですよね。
母様には『キャラ被りはNG。ひいては御法度。』って言われてキャラ変更しろって言われてますけど。」

「キャラ変更?」

「手っ取り早く語尾にごわすを付けてみましたが皆に止められて1時間で辞めました。」

「…そりゃ止められるよ。」

「なかなか美味しいキャラだと思ったんですけどね。
お小遣い増額を希望するでごわす。」

「…見た目と表情と口調が絶妙な不協和音になってるなあ。
というか第一王女なのにそんなにお小遣い少ないの?」

「昨年世界征服の為に人造ゴーレム兵の軍隊を作成しているのがバレて減額されてしまいました。」

「…陛下の苦労がありありと分かるよ。」

クリスは翠色の目尻を下げて笑う。

見た目は全く違うのに昔のキャロルがシェリルに重なり笑えてきてしまうのだ