夜明けを告げる小鳥の鳴き声だけが聞こえる爽やかな朝。

人々がそろそろ起床を迎えようとする新しい1日の始まりの時間。

マリアヌ国の王宮に轟音が響き渡ったのはそんな時だった。

「はっ?!
何?!」

ベッドで眠りこけていたレオンは混乱した頭のまま跳ね起きた。

クーデターか?

他国からの攻撃か?

レオンは寝惚けた頭のままとりあえずルシウスの元へ駆け付けねばとベッドから飛び出す。

靴を履く時間さえもどかしく裸足のまま部屋を飛び出した。

有事ならばルシウス達だけでも逃がさねばならない。

レオンは3つ程隣のルシウスの寝室の扉を開き中を覗いた。

「陛下!!!
…ってあれ?
いない?」

キョロキョロと見渡すがルシウスのベッドにその姿はない。

一体どこ行った?と首を傾げながら今度は隣の部屋を覗く。

…やはり誰もいない。

廊下に出るとその隣の部屋の扉が吹き飛んでいるのが見え嫌な予感を抱えながらそっと覗き込んだ。

部屋の中にはルシウスが腕を組んで仁王立ちしていた。

宗教画から飛び出して来た様な神々しいまでの美貌の眉間に深く深く皺を刻んでいる。

レオンが声をかけようと部屋に足を踏み入れるとルシウスの目の前に正座する少女の姿が見えた。




雲に沈む太陽の様な白金色の長い髪。


深海に指す光の様な銀の虹彩混じりの藍色の瞳。


地上に舞い降りた天使の様な少女。

そんな少女が正座しながらルシウスからプイッと視線を背けている。

「…一体今度は何をやらかしたのかなシェリル。」

ルシウスが重低音ボイスでシェリルと呼んだ少女に問いかける。

シェリルはチラリとルシウスを見ると不貞腐れたまま口を開いた。

「…城を飛ばそうとしました。」

「…は?」

レオンはその言葉にがっくりと項垂れた。

知ってる。

何故かこの会話知ってる。

「…この前絵本で天空の城ってのを見まして。」

「…もしかして天空の城って防御力最強じゃね?とか考えた?」

「えっ父様鋭いですね。
エスパーですか。」

「…。」

「まあそれで朝起きたら天空の城とか楽しそうじゃね?と思い実行しようとしたんですが。」

「…城の土台が予想以上に深かったかい?」

「その通りです。
凄いですね父様。」

レオンはがっくりと崩れ落ち膝を着いて顔を掌で覆った。