紅色の薔薇が咲き乱れる庭園に置かれたテーブル。

そこでは少年少女が茶会を開いていた。

その茶会に赤髪の幼児がてとてとと覚束無い足取りで寄っていく。

茶会に参加していた1人の少女が気が付き赤毛の幼児を抱き上げた。

「あらシャルルじゃない。
お父様とお母様は?」

「っちー。」

幼児があっちと指差した方向は王都である。

抱え上げた少女は首を傾げた。

「…宰相様って今日王都に視察のご予定だったかしら?」

「違うんじゃないか。
一緒に行ったのは王妃陛下?」

少女の独り言を聞いた少年がにっこりと笑いながら幼児に問い掛ける。

だが幼児はあぶーと首を傾げてしまった。

少々難しかったらしい。

どうしようかという空気が流れている中キョロキョロと辺りを見渡しながら庭園を足早に歩く男性がいた。

白金色の柔らかい髪をたなびかせるその姿は宗教画の様に美しい。

男性は藍色の瞳で庭園を見渡した後ため息を着きながら茶会をしている子供達に話し掛けた。

「こんにちわ。
誰かキャロルかレオンを見なかったかい?」

「御機嫌よう陛下。
シャルルが来たけれど宰相様がいらっしゃらないので私達も困っておりますの。」

少女は膝に抱えた赤毛の幼児を撫でながら男性に答えた。

陛下と呼ばれたその男性は困った様に少し眉を下げる。

「そうか…。
また飲みだおれているんじゃないといいんだけど。」

「あら、こちらにいましたのねシャルル。」

庭園にまた人が増える。

ブロンドの髪に翠色の勝ち気そうな顔をした女性が赤毛の幼児を抱き上げた。

「ごめんなさいね。
お見送りしていたら急にいなくなってしまって。
見ていてくれてありがとう。」

「いえいえ大丈夫ですよアンジェリカ夫人。」

「あっアンジェリカ。
キャロルを見なかったかい?」

「あらルシウス陛下御機嫌よう。
お義姉様なら先程見送った所ですわよ。」

「…見送り?」

アンジェリカはシャルルを抱えたまま首を傾げる。

「えぇ。
本日より1週間ゴーウェン領の視察がてらレオン様と薬剤の材料を取りに行きましたわよ。」

その言葉にルシウスの神々しいまでの笑みを浮かべた頬がピシリと引きつった。