Romantic love

1階のリビングに通されて、陽子さんが出してくれたお茶やらお菓子やらを口にしながら、3人でおしゃべりをした。

と言っても、私は基本、お母さんと陽子さんが話をしているのを聞いているだけ。

たまに質問が飛んで来て答える、と言った感じだ。

そういえば、例の息子さんは帰って来ないのだろうか。

ひとめだけでも会ってみたかったのに。

「へえ。うさぎちゃんは今大学生なんだ?」

「あ、はい。そうです」

「そっか、うちの子より1、2個下だったもんね。それより大学、H大の理系なんだって?」

「はい。工学部の情報デザイン学科です」

「優秀で羨ましいよ。うちの子なんて、高いお金払って私大行かせたのに、就職しないでフリーターしてんの」

「どうせ陽子ちゃんと太一たいちくんが、ひとりっこだからって甘やかしたんでしょ?」

陽子さんの旦那さんは、太一さんというらしい。

あ、2人の名前合わせたら太陽になるな、なんてぼんやりと考えた。

「だってうちの子、ほんと可愛いんだもん」

「ただの親バカじゃないの。そういえば、太一くん元気にしてるの?」

「元気よ。あなたに会いたがってたけど、仕事が入っちゃって……」


「ただいまー」


陽子さんが言い終える前に、そんな声が玄関から聞こえてきた。

「あら、噂の子が帰って来たみたい」

息子さん……ってことは、私が小さい頃大好きだった人。

もしかしたら、私がずっと会いたくてたまらない人かもしれない。

帰って来たんだ……。

なんだか急に、ドキドキしてきた。