『ちゃんとごはん食べてるの?』

実家に帰らない私を心配して、お母さんが電話をかけてきた。

春に帰ったばかりなのに。

うちの親は、ちょっと過保護な所があって困る。

まあ、愛されている証拠なんだろうけど。

「大丈夫、食べてるよ」

『バランスよく食べなきゃ風邪引くわよ?』

「ちゃんと野菜も食べてるし」

『お母さんごはん作りに行こうか?』

「だから大丈夫だってば」

『そう?お母さんも久しぶりに帰りたいし』

お母さんは、私が住んでいるK区出身なのだ。

私が小さい時に、おばあちゃんが足を悪くして、うちで同居するようになったから、もうK区に実家はないけど。

「うーん、じゃあ……来週あたり来る?」

『そうね。じゃあ陽子ようこちゃんにもお茶しようって連絡しとこうかしら』

「陽子ちゃん?」

『お母さんの幼馴染みよ』

「へえ」

『あら、あなた、小さい頃おばあちゃんの所に行った時、陽子ちゃんちにもよく遊びに行ってたわよ。覚えてない?』

「うーん、全然」

おばあちゃんがまだK区にいた頃と言えば、多分私は3、4才くらいだ。

記憶なんて殆どない。