一時間目の数学を終えた後は、美術の授業。その次は体育、そして科学。午後からは外国語だ。

アリスにとって退屈な授業を終え、学校は放課後となる。

普段は学校の図書室に寄っているのだが、今日は司書さんがいないため図書室は空いていない。仕方なくアリスは家に帰ることにした。

いつも通りの帰り道。普段より早いため、明るい。誰だって事件が起こるとは思わないだろう。

アリスはこれまで犯罪に直面し、それを解決に導いてきた。被害者や加害者と関わってきたが、犯罪の牙が彼女自身に向けられたことはなかった。

それが起きたのは、一瞬の出来事だった。

アリスの腕を突如何者かが掴む。そして、アリスに声を上げさせる間もなく裏路地へと引っ張った。

驚くアリスの鼻に、ツンとした独特の匂いが入り込む。口と鼻に薬品を染み込ませた布を当てられているのだとアリスは気づいた。

後ろから襲われているため、相手の顔はわからない。アリスは抵抗しようとするが、相手は力いっぱいアリスを抱きすくめている。