「お前のおかげで、捜査がとても助かっている」

「本当ね!さすが私とお父さんの子どもだわ!」

金髪緑眼の刑事の父と、黒髪で黒目の弁護士の母は、穏やかに笑う。

アリスはハーフだ。父はイギリス人で、母は日本人。父の緑の目と母の黒髪を受け継いだアリスは、近所の人や学校の生徒から「歩く宝石」と呼ばれたりする。本人は、そんなことどうでもよくただ暇つぶしに事件を解決したいだけだった。

食べ終えたアリスは席を立ち、歯を磨いたり顔を洗う。そしてかばんを持って家を出た。

「行ってきます」

リビングから「行ってらっしゃい!」という明るい声が返ってくる。アリスは学校への道をゆっくりと歩いた。

現場ではしっかりしているが家では緊張感の抜ける父、いつものんびりしている母、姉を尊敬して日々推理合戦を繰り広げる二人の弟ーーー。

事件を解決するのは好きだが、温かさは感じない。胸に広がる温かさは、家でしか感じない。アリスは家が大好きだ。



アリスの通学路にあるカフェ。新聞を読んでいた男性は、アリスが通ると顔を上げ、アリスの横顔を目に焼き付ける。

「……必ず、君を手に入れる……」

男性が広げる新聞には、神出鬼没の怪盗の記事が載せられていた。