1年前 夏 ー始業式ー
高校2年生になってからも
去年と変わらないクラスメイト。
HRが終わり午前授業だったのもあって
どこで遊ぶかの話を始めだす人が多くいる。
そんななかで私は、渡されたプリントを鞄に入れて
いつも通り教室を出る。
中央階段で3階から1階へ移動して、
すぐ側にある生徒玄関へと向かう。
靴をはきかえて玄関を出る。
校門を通り道路へ出ると、いつも通りの帰り道を歩く。
いつも通り。
そう、私はいつもひとり。
別にいじめられてるわけじゃないけど、
入学してから今までずっと誰かに話しかけるって
勇気がなくて…気づいたらみんなそれぞれグループが
私は…1人になっていた。
どのグループにも属さない、いつも1人。
嫌だなって、寂しいって思うけど、
やっぱり今更、声をかけるなんてできなくて…。
私の通う学校はクラス替えがないから
進級しても今まで通りで、
状況は変わらなくて…。
放課後は寄り道することなく家に帰るのが日課。
「このままじゃだめだってわかってるけど…」
そう言いながら帰るのもよくあること。
さっきまで騒がしかった学校から
静かな住宅街へと移動して…
1人なんだって余計感じる。
学校から家までが近い距離だから直ぐにつくけど
やっぱり、1人って事実を改めて感じるから
帰り道って嫌いだな…。
しばらく歩いていると、
大きな桜の木が象徴の病院が見えてきた。
ここを通り過ぎてすぐの所に家がある。
この桜の木も春は綺麗に咲いてたけど、
今は緑色一色で周りにいるセミの鳴き声が
うるさいと感じるくらいで、
いつも無関心に通り過ぎる。
「春は綺麗だったのにな。」
大きな桜の木は春になると満開に咲き誇って
帰り道の唯一の楽しみ、癒しと言える。
「あの桜を綺麗だって共有できる人がいたら。」
そんなこと呟きながら木の前を通る。
いつも通り、下を向いて。
病院の目の前の道を真っ直ぐ進んで
突き当たりを右に曲がり、
よく吠える犬がいる家を通り過ぎて、
小学生が遊んでる公園を通り過ぎて、
住人と大家さんがよく喧嘩してるアパート、
そこの横の道を左に曲がり3件目、
よくある一軒家、特に特徴もない、
どこにでもある家、ここが私の家。
お父さんはサラリーマン、
お母さんは専業主婦、
お兄ちゃんは大学生で一人暮らしをしてる。
お兄ちゃんがいなくなってから寂しいのか
両親は私を甘やかすようになった。
学校から直ぐに帰ることも
『澪は真面目でいい子ねぇ。』
なんて言って、とにかくなんでも褒めたがる。
お兄ちゃんが時々帰ってきた時は、
私の存在なんて忘れたみたいに
お兄ちゃん大好きなのに…。
私はおにいちゃんの変わりじゃないよ?
って1度言ってみたいな…
そんな事言ったら悲しむだろうな…
って思いながら甘い地獄の我が家への
扉を開ける。
「ただいまぁ」