Ｒｉｇｌｅ’ｓ

ブンッ

と小さくエンジン音が鼓膜を揺らすと、少年は迷わず虚空へと身を投げた。

サポート役の二人は

「あっ」

と思わず声を上げる。

１５ｍも下だろうか。
巨きなパイプの陰から姿を現した新型の銀地に緑のライン取りのフリットバイクは、目標にしていたあの一台に間違いない。


「ヘリアーーース！」

少年の甲高い叫び声に受信の波長が合ったかのように操縦士が顔を上げる。

「げっっ、エディ！？」

ハンドルを大きく右に切る。それを知っていたようにエディは両足を打ち合わせるようにしてジェットの噴射を調節する。徐々に近付く肢体に凍り付くような相手の顔色を見透かすように、無理矢理機体へ転がり落ちる。
簡単に異物を寄せ付け無いはずの強化シールドをものともせずに、エディはハンドルと操縦士の間に割り込む。
視界を遮られて進路を見失いそうになりながら、へリアスは抵抗する。
組み合おうとするへリアスを躱しながら、一瞬の隙を突いて、エディは後ろ手にハンドルの主導権を行使する。
失速気味の機体はビル壁に向かいながら、動揺する。
周囲のフリットバイクを慌てさせながら、衝突のループに入ったようだった。

「う…、わぁ！」