Rigle’s

タンデムしていた機体は再びシールドを展開して操縦席を保護する。機上の二人は目標のフリットバイクへ向けて走り出した少年のサポートをするべく移動する。
走路の描く流れに沿い、当然のようにビルの間を縫うように優雅に滑走して行く。緩やかな大きなカーブに差し掛かったところで、気紛れなビル風に煽られてバランスを崩しかける。見守る二人はヒヤリとする。地上80mは下らない高所を駆るのだ。耐衝撃性能の強度も怪しい安価なライダースーツくらいの装備でで落下したならひとたまりも無い。
フリットバイクを走路下にまわしサポートしようとすると、どうにか持ち堪えたようだ。
滑走を続ける少年は片足の爪先を踵で踏む。ジェットのパワーが上がり一気に加速する。
機上から

「無理すんなよ」

と叫ぶ仲間の声がヘルメットのスピーカーから届くとほぼ同時に、少年はパイプ上から向こうへ落ちる。
事故ったな、と察した二人は慌てて走路の下を潜り、華奢な姿を捜す。サーチシステムのレーダーにも見つけられず、上方へ視線を巡らすと、パイプの接続部分の足場に佇む少年に気付いた。

一心にビル街の一角を見つめている。
目標のフリットバイクが通るタイミングを計っているのだ。
耳を澄まし、意識を集中し、風を読み、時を待っている。