Ｒｉｇｌｅ’ｓ

景観が良く、人気のスポットのため年契約は受け付けていない。ひと月で解体・建設が繰り返される区画もある。

平均的に道幅は広く、歩道は緊急時に大型車が通行出来る余裕（ゆとり）がある。
環境に対する目線は徹底しているため、街路樹は勿論のこと路地裏にも植込みが整備され大気の酸素含有量増加が謀られてもいる。

つまり、フリット・バイクで動き易い条件が整っているのだ。


遠く煙るスモッグのような塊の一群が徐々に正体を露わにし始める。
保護を兼ねた液晶被膜カバーの強化ガラスはいよいよ本領発揮の時間とばかりに賑やかに、企業広告やニュースが移し出されている。
そこに形を持たない気紛れな煙りのように影が浮かぶ。
今日は特に伸縮の幅が大きい。彼等の気分が沸き立っているようだ。ビルとの接近は２０ｍ以上と法規で決められているが、明らかに彼等は侵犯している。


湾岸のビル街の一角から到来を待ち望む影があった。

通りから路地を少し入った、ビルの影に息を潜ませている。


上空では林立する高層ビル群の間を縫うように幾重にも交差しているリニアカーの走路のグラスファイバーが、腕を見せろと誘うのだろう。